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「館」:解釈(10)

 最後に、この物語がもつ外的リファレンスの件。ズバリ、女料理人は三島の祖母・夏子。暴虐な殿さまは父・梓。美しい奥方は母・倭文重。そして「ぷろすぺる公」と殿さまの叔父とがミックスして祖父・定太郎のイメージを形成しているような気がする。

 以下でその推定の根拠(というほど大げさなものではないけど)を挙げておく。

1)女料理人は三島の祖母・夏子
 まずは、以前指摘した通り、この作品が出る10ヶ月ほど前に夏子が死んだこと。それにより、奇妙な"幽閉生活"をともにした夏子の人生を、三島はこのとき総括できるようになったのではないか。この状況が本作品に反映しているように思える。

 また、女料理人の「まりあな家としての矜持」は、夏子の母方の系譜に繋がる。夏子の母・高(たか)は宍戸藩(水戸の支藩)の藩主松平頼徳(よりのり)の側室の娘であり(猪瀬直樹『ペルソナ 三島由紀夫伝』文庫版p.142)、夏子自身も結婚するまでの数年間を有栖川家に預けられていた(このあたりは猪瀬本pp.140-148に詳しい)。

 この部分と「館」pp.76-77を見比べるのは楽しい。「手前」は女料理人の矜持というものを虚栄であり自己満足ではないかと断じている。これは三島からの夏子への視線だったのではないだろうか。

2)暴虐な殿さまは父・梓
 三島が書いていた原稿を破り捨てたり、ラジオのつまみを壊した三島を木刀で折檻しようとしたり(猪瀬本p.159ほか)。何より、倭文重がジョン・ネイスンに語った「ネイスンさん、うちの主人がどんなにサディストかおわかりですか」(同書、p.163)が端的に証言していると言えよう。このイメージが殿さまに通じる。

3)美しい奥方は母・倭文重
 いま手元に多くの資料本がないので猪瀬本ばかり参照する格好になってしまうが、これも同書p.201にあるエピソードの通りだ。この「館」を書いたのと同じ中学時代に「紫陽花(あじさい)」という小説をクラスで書き、ここに自分の母が非常に美人だと自慢している。これはそっくりそのまま「奥方」の登場シーン(「館」p.61)ではないか。

4)「ぷろすぺる公」+殿さまの叔父=祖父・定太郎
 これについては、上の3者関係から引き写しての相対的な推察である。残虐さ、母系への"侵略"…といったイメージを連ねると、祖父・定太郎に通じているというのがワタクシの解釈である。

 以上で、この奇妙な小説「館」の象徴解釈と妄想的解釈を終える。この館には隠し部屋はまだいくつかありそうだが(処刑部屋とか=笑)、屋根裏部屋あたりにまでは立ち入ることができたのではないだろうか?
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銘記せよ! 三島語録
(…)われわれは戦後の日本が経済的繁栄にうつつを抜かし、国の大本を忘れ、国民精神を失ひ、本を正さずして末に走り、その場しのぎと偽善に陥り、自ら魂の空白状態へ落ち込んでゆくのを見た。政治は矛盾の糊塗、自己の保身、権力欲、偽善にのみ捧げられ、国家百年の大計は外国に委ね、敗戦の汚辱は払拭されずにただごまかされ、日本人自ら日本の歴史と伝統を涜してゆくのを、歯噛みをしながらみてゐなければならなかつた。(…)
「檄」楯の会隊長 三島由紀夫
保阪正康『三島由紀夫と楯の会事件』(角川書店[文庫版]、2009年)p.19より引用
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