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「館」:解釈(7)

 そのように考えると、奥方~女料理人~盗みをする貴婦人、という3人の関係が、神―運命、善―快楽、理念―行為、という2項対立のなかで濃淡をもちつつ、順に位置づけられていることが分かる。

 つまり、奥方は神や善、理念を大事にしてはいるが、現世から退いていて祈りの部屋から出てこないタイプ。いわば手を汚さない人物である。他方、盗みをする貴婦人は、実は殿さまと同じタイプで直接的行為(ま、世間的に言えば犯罪行為ですわ)をなす人物で奥方の対極にある。

 彼女は盗みを犯しているときに陶然としてしまい、なにかに憑りつかれたようになっている。

===
 と、婦人のあのまなこはものごとの兆(きざし)のやうなひかりをふくんで、よろこばしげにふときらめきかゞやきました。そして、ゆめのうちでのしぐさのやうに、無器用[※ママ]に手をのばし(…)その「夢みる猫」のやうなまなこはいまだに目醒めてをらぬのでございます。(p.71)
===

 これは殿さまのいう「だれのうちにもある、きえたやうでいつまでもひそんでゐるこゝろ」(p.63)である。同時に、「手前」が感じる「嬰子(みどりご)が蟲かなにかをふみつぶしたときにかんずるやうな、すさまじい歓喜」(p.68)に通じる。

 …ん、当ブログは犯罪教唆をしているわけではありません!(わが母が「三島は読むな!」と言っていた理由も分かるなぁ=笑)
 
 さて、女料理人は奥方と貴婦人の中間にいて、消極的な行動(それとなく殿さまに昔の本を渡す、「手前」の額にキスをする、民衆や「りりえる国」と通じる、など)を取る。しかし女料理人の目は犯罪行為を前に輝いてはいないし、直接的に殿さまを殺す行動に出ることもない。この辺りが面白い位置取りである。

 一点、面白いところに気づいたので記しておく。女料理人が殿さまに本(ぷろすぺる公時代の「盗んだら処刑」という法律について書かれている)を渡すところである。

===
 わしが本にみいつていると、そのをんなめ、ねろねろとおのれの手をわしのうでにまきつけをつた。(…)おほごゑをたてゝやつたわい。をんなはものをぬすんだねずみのやうに、いつさんに遁(にげ)てゆきをつた(…)」(p.68)
===

 盗みをした鼠という描写によって、壺を盗む貴婦人からも遠くない位置に女料理人がいる、とワタクシは解釈する。
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銘記せよ! 三島語録
(…)われわれは戦後の日本が経済的繁栄にうつつを抜かし、国の大本を忘れ、国民精神を失ひ、本を正さずして末に走り、その場しのぎと偽善に陥り、自ら魂の空白状態へ落ち込んでゆくのを見た。政治は矛盾の糊塗、自己の保身、権力欲、偽善にのみ捧げられ、国家百年の大計は外国に委ね、敗戦の汚辱は払拭されずにただごまかされ、日本人自ら日本の歴史と伝統を涜してゆくのを、歯噛みをしながらみてゐなければならなかつた。(…)
「檄」楯の会隊長 三島由紀夫
保阪正康『三島由紀夫と楯の会事件』(角川書店[文庫版]、2009年)p.19より引用
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